鳥取県の東部には、若桜鉄道というローカル線があります。鳥取県八頭郡の郡家駅~若桜駅間を走る、長さ19.2kmの短いローカル線です。
おもに地元の方々の足となっていますが、駅舎などに昔から変わらぬ雰囲気を残し、里山の車窓も合わせてとても風情あるとテツ(注:鉄道ファンの略称です)の間だけでなく評判の路線なのです。
秋も深まった週末に、若桜鉄道を満喫しようとおでかけしました。
個性的な駅舎がいっぱい!
若桜鉄道には全部で9つの駅がありますが、そのうち5つの駅をめぐりました。

隼駅は、その名前からスズキのバイク「スズキ・GSX1300Rハヤブサ」ファンから聖地とされていて、年に一度の「隼駅まつり」には大勢のバイク乗りが集まり、スズキ本社から協賛をうけるまでになっています。
駅舎内部でも若桜鉄道グッズと並んでハヤブサグッズが販売されています。スタンプラリーも行われたりするそうです。そんなバイク乗りの聖地ですが、鉄道ファンも満足いくような趣ある木造の駅舎です。

駅舎内には昔に使われていた重量計やタブレットの展示のほか、今でも使われている窓口カウンターの設えもとてもよい感じです。
安部駅は映画「男はつらいよ 寅次郎の告白」のロケで使用されたことのある、昭和の香りを存分に残した駅舎が特徴です。若桜鉄道の駅舎はどれもシブい木造ですが、その中でも郡を抜いていると思いました。

またホームにある待合室もちょこんとしいた印象の木造で、台風とか来たら大丈夫なのかと心配してしまいます。でもそれがとてもいい味を出しているのです。

おひさまが存分に当たってポカポカ暖かくなっている待合室で、しばらくノンビリと休憩しました。
八東駅は隼駅に似た駅舎や、これまた趣あるホーム待合室があります。ここでのお目当ては隣接して保管されている、昭和初期に活躍していた貨車車両。使われなく放置されていた(もったいない!)車両を、地元の方々が活性化のために保存しているそうです。

八東駅はその昔、貨物基地としても賑わっていた駅でした。その頃の面影を復活させようという取り組みです。一部ですが貨車ホームとレールまで復元してあり、車内見学はできませんが十分楽しめます。
丹比駅もこれまた素敵な木造駅舎で、ここでの見所はプラットホームに使われているレールです。交換により不要になったレールが白く塗られて、駅舎の屋根骨や柱補強に使われているのです。

レールには製造番号と年代が残っていて、なかには大正時代まで遡るものや、英国で使われていたものもあります。
終着の若桜駅は、これまで挙げた駅舎と同じ木造建築ですが、いちばん大きく広く造られています。

待合室には若桜鉄道グッズをたくさん置いたお土産屋さんや、タブレットなどの昔使用されていた機材の展示ケース、待っている間に読める図書スペース、そして何とwifiの接続スポットまであるという充実ぶり。

改札も有人で(上で紹介している駅はすべて無人です)アクリル板張りの今風な造りですが、駅舎の雰囲気を損ねないよう調和しています。
若桜駅でのお楽しみ
若狭駅にはまだまだお楽しみがあります。ここでは夏休みを中心に、C12型SLの乗車体験ができるのです。秋でも連休に合わせて1~2日間行われます(1日3回)。2週間前までの予約が必要です。
この日も運行していて、たくさんの人がSLに引かれる客車に乗って楽しそうでした。SL体験を行わない日も、駅構内に残る今は貴重となった回転台(SLなど車両の向きを変える台)やSLへの給水塔を見学することができます。
そして駅に隣接する形で道の駅若桜があります。広い駐車場やレストランがある大きな道の駅です。こちら側からSLを眺めることもできますので、駅観光と合わせて若桜の特産品(フルーツがたくさん作られています!)を見るのも楽しいです。
古い町並み散策を楽しむ
さてこの若桜、鎌倉時代に築城された鬼ヶ城の城下町として、近世には若桜宿として街道の要所となっていました。
若桜駅から歩いて5分ほどの場所にあるメインストリートには今でも古い町並みが保存されています。仮屋と呼ばれる明治時代のアーケードも中々お目にかかれないもの。若桜は豪雪地帯で、雪の降る日はこの下を通っていたそうです。

裏通りには蔵が密集して建つ通りがあります。これは明治18年に若桜で大火事があり、町を再建する際に燃えにくい蔵を大切な寺町の周りに集めることとなりました。素敵な白壁の蔵が整然と立ち並ぶ風景は圧巻です。
また一角には古い蔵や町家を改造したカフェや休憩所があり、こちらで休みながらゆっくりと町並み散策をしました。

若桜鉄道の旅は思いがけず盛り沢山な内容で、ちょうど紅葉シーズンだったことと相まって1日楽しく過ごしてしまいました。
今回の旅はだいぶ鉄道に寄った内容となってしまいましたが、若桜鉄道の駅舎めぐりは鉄道に興味のない方でもじゅうぶん楽しめると思います。鳥取へ観光に来られた際は、ぜひ訪れてみてください。