先日、山形に住む20年来の女友達に会うため冬の山形を訪れました。
友人とはどこか一泊しようかとの話になり、ならばかみのやま温泉のニュー村尾に泊まりたい!との友人の希望を受けて、ニュー村尾の離れ荘に宿泊することとなりました。
かみのやま温泉といえば山形でも屈指の温泉地。それに古窯や橋本屋といった名宿も多く、なぜあまり有名でない村尾に?と当初はいぶかしみましたが、実際訪れてみると文化財クラスのお部屋に泊まれて、温泉や館内施設が充実した素晴らしい宿でした。
そんなニュー村尾の魅力を、離れ荘客室を中心にご紹介しようと思います。
ニュー村尾とは
ニュー村尾は元を村尾旅館といい、創業は大正時代。創業以後上山温泉の格式高い温泉旅館として、多数の文人墨客や政治家が訪れ、戦後は民間で初めて昭和天皇がお泊りする宿に選ばれました。
平成に入ってから王将グループの傘下となり、往時よりだいぶリーズナブルに泊まれる宿となりましたが、一般客室以外にも昔からの由緒あるお部屋を維持し続けています。
浪漫館と5つの離れ客室は離れ荘と称され、その大正ロマン溢れる純和風客室が今でもファンを惹きつけて止みません。
大正ロマン溢れる純和風の離れ客室
そんな歴史あるお部屋の1つ、離れ荘の「観月の間」に泊まりました。本館ロビーから奥へ進み、歴代の芳名帳が並ぶ廊下を過ぎると、昭和レトロなファブリックと竹久夢二の絵が並ぶ浪漫館のギャラリーへ出ます。

そこに改めて門(屋内なのですが)があり、ここからが離れ荘です。門をくぐって靴を履き替えると、明らかに古い造りなのに光るまで磨き上げられた階段を登り、緋毛氈(ひもうせん)の廊下を進みます。

窓枠の細工も凝って美しく、さらに外に見える和風庭園には雪がしんしんと降り積もり…一瞬で何十年もタイムスリップした感覚に襲われました。

観月の間に通され、さらに感激の私たち。ふすまもは4枚続きで松や楓の林が、隣の押入れのふすまには可憐な白梅が描かれています。
欄間(らんま)や雪見障子、天井、書院窓、花灯窓(かとうまど)の意匠も今では目にすることができない繊細な造りです。床の間の天井ですら細かな細工が施されています。

加えて昭和12年の建築のはずなのに、多少手を加えているとしても全く古さを感じさせません。私は今までそこそこ良いお宿や歴史あるお部屋に泊まったことがありますが、そのどれよりも風格や重厚感、気品を感じさせます。
文化財に指定されるお話もあるそうですがさもありなん。「本物」ってこういうことなんだろうな…と感激しっぱなしでした。

室内は10畳ニ間と廊下、広縁、踏み込み、脱衣・洗面所に内風呂とお手洗いという造りです。広縁は離れ荘用の和風庭園を一望できる見晴らしの良さで、この日は池と雪景色が素晴らしかったです。

脱衣所・お手洗い・内風呂はかたまっていて、広さも申し分ない。加えてこちらでも窓枠などの細工は凝ったもので、裏方のスペースでも手を抜かない姿勢が伺えます。
内風呂は石とヒノキで造られたシンプルなもので、お湯は温泉がこんこんと掛け流し。窓から雪の降る様を見つつ、ゆったりと温泉を楽しめました。
室内には文机が置かれ、私と友人は文豪ごっこまでする始末。でも本当に何か名作が書けてしまえそうなお部屋でした。
こういうお部屋にもかかわらず、アメニティ類はとても充実していました。タオルや浴衣は使い心地良く、コスメセットはミキモト。あぶらとり紙、足指パッド、冷えピタシートまで用意されていました。
山形の幸や温泉も存分に楽しんで
離れ荘や浪漫館以外の、現代風なエリアの施設もさすがは名旅館というものです。ロビーは天井がものすごく高く広々とした空間。ラウンジスペースのいすや絨毯は品良く心地良いものでした。

大浴場もこれまた広々としてきれいで、石やタイル造りの現代的な浴槽。露天風呂にはリンゴがいくつも浮かぶものもあり、とても良い香りに包まれました。

お食事はプランによっていろいろ選ぶことができ、離れの個室から広間まで選ぶことができます。どのプランでも米沢牛や芋煮、こんにゃく、そばといった山形名物が並ぶ美味しいお食事で、珍しいのは豪華内容ながら何と825kcalの健康プランが用意されていること。
これは糖尿病をはじめとする生活習慣病の方でも、みんなと一緒に旅館の食事を楽しめるようにとお医者様が監修したメニューだそうです。
朝食はバイキング会場で、これまた山形の郷土の味が並ぶ和風バイキング。スイーツにはずんだ餅もあり、優しい枝豆餡の甘さを堪能しました。
宿の方々の対応もすごく良くて、続けて何泊もしたくなってしまった宿でした。
旅データ
- 住所:山形県上山市新湯1-28
- 予算:7,500円~(朝食付き)、10,400円~(2食付き)
- アクセス:かみのやま温泉駅より徒歩15分
※現在、長期休館中